溶連菌感染について

2016年02月02日

溶連菌による風邪症状の患者さんも多く見受けられます。
溶連菌についてまとめてみましたので、お時間ある方はご一読下さい。

 風邪症状を引き起こす原因のひとつに溶連菌感染症があります。以前は冬や春~初夏にかけて多いとされていましたが、現在では年間を通じて認められています。
 A群溶血性連鎖球菌(溶連菌)の感染により発症します。
 潜伏期は2~5日で、発熱、全身倦怠感、咽頭痛などにより発症し、咳、痰、鼻汁などの風邪症状に加えて、嘔吐や腹痛などの消化器症状も認められる事があります。
 舌に真っ赤な発疹がでたり(イチゴ舌)、手足にも発疹が出現したり、発熱や発疹が治った後、手足の指先の皮がむけたりすることもあります(膜様落屑)。
 風邪症状の他、とびひ、中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎、猩紅熱などの原因にもなります。小児では、心臓弁膜症を起こす恐れのあるリウマチ熱や急性糸球体腎炎が惹起されることがあり、要注意です。
 治療は、ペニシリン耐性の溶連菌の報告はほぼ無いため、ペニシリン系の薬が第1選択薬です。ペニシリンアレルギーがある場合にはマクロライド系やセフェム系の抗生物質も使用する事があります。いずれの薬剤もリウマチ熱、急性糸球体腎炎など合併症予防のために、少なくとも10日間は確実に内服することが必要です。また1回溶連菌にかかって治癒した後でも、日本の溶連菌のタイプは4~5種類あるため、その後も4~5回は感染する可能性があります。抗生物質は比較的良く効きます。抗生剤を内服開始して24時間以上経過したら、周囲への感染のリスクもほぼ消失するため、患者さんの症状が改善傾向であれば、就学や就業も可能となります。
 溶連菌感染の有無は、迅速診断キットを用いれば10分前後で診断可能です。インフルエンザテストは、風邪症状が出現してから24時間以上たたないと偽陰性になることも多いですが、溶連菌テストは、症状発現早期でも偽陰性が少ないので診断に役立ちます。他、採血検査で血清抗体を検索する方法もあります。
 感染経路は、ヒトからヒトへの感染です。溶連菌の患者さんとの接触を介して感染は広がっていきます。急性期の家族内感染率は25%前後と高率なので、溶連菌患者さんだけでなく、御家族もマスクを装着し、うがい手洗い、コップやタオルの供用を避けるといった予防が必要です。
 昨年テレビ等で話題になった「人食いバクテリア」の原因も溶連菌です。
 発症機序や病態生理は不明ですが、傷口やのどから血液中に入り劇症化する、劇症型溶血性レンサ球菌感染症(レンサ球菌性毒素性ショック症候群)になると、生命の危機に陥ります。初期症状は手足の痛みと腫れや発熱で、気づいたときには手足の壊死、多臓器不全が進み、発病後数十時間でショック状態を起こして約30%もの人が亡くなってしまいます。しかし発症はごくまれであり、すぐに抗生物質を投与して壊死した部分を切除すれば治る可能性もあります。
 溶連菌感染症はよく薬が効きますが、怖い病気でもありますので、溶連菌と診断されたら、必ず医師の指示通りに抗生物質を長期間内服することを守るようにして下さい。

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